鉄道向け統合ソリューションでテロ・事故を低減
31.01.2023
背景
都市部における日々の通勤・通学において、鉄道(地下鉄や近郊鉄道など)は、依然として世界規模で最も利用されている移動手段です。カリフォルニア州立大学サンノゼ校のミネタ交通研究所がまとめた統計によれば、過去50年間で鉄道を標的としたテロ事件が300件超発生し、極めて多くの尊い命が失われてきました。さらに、この統計には未遂に終わった事例は含まれておらず、鉄道運行における安全対策の重要性が一層高まっていることが示されています。
近年では、AI技術の進化により、鉄道事業者は最新の推論技術を活用した先回り型の監視や予測が可能となりました。これにより、乗客の安全確保とセキュリティ強化の両立が実現されています。
システム要件
日本の治安の良さは世界的に高水準ですが、近年では密閉された列車内での事件が相次いで発生しており、必ずしも安全とは言い切れない状況が生じています。放火や刃物を使った凶悪な事件は国民に強い恐怖心と衝撃を与えており、政府や鉄道各社に対して一刻も早い安全対策の強化を求める声が急速に高まっています。このような状況を受けて、国内のある鉄道会社は、人間の骨格や身体の動きを検知・分析できる最先端のAIシステムを開発しました。
本コンピュータビジョンシステムは、車両内に設置された複数のカメラ映像を統合的に解析し、乗客の行動パターンや所持品をリアルタイムで識別します。例えば、乗客が凶器を携行している場合には、その兆候となる行動を検知・予測することで、事件が発生する前の段階での抑止や被害の未然防止が可能となります。また、車内での転倒など、突発的に発生する軽微な事故についても迅速に検知し、速やかな救護やサポートにつなげることができます。
システム概要
弊社は、国際的な鉄道規格である「EN 50155」に完全準拠した、信頼性の高い包括的なシステムソリューションを鉄道事業者に提供しました。本ソリューションは、ファンレスシステム「ITA-5231G-S7A1」、MXM GPUモジュール「SKY-MXM-T1000」、マネージドイーサネットスイッチ「EKI-9512G-4GMW」で構成されています。
本製品は、走行車両内に計8台のPoE(Power over Ethernet)カメラを設置し、走行中の車内映像をリアルタイムで取得・記録します。撮影された映像フレームは、専用のAIソフトウェアをあらかじめ搭載した車載用ファンレスPC「ITA-5231G-S7A1」へ即時に送信されます。ITA-5231G-S7A1は、エッジAI処理に最適化されたMXM GPUモジュールを活用することで、高負荷な映像解析を低遅延で実行し、異常事象をリアルタイムに検知します。万が一、車内で危険な状況が発生した場合には、システムが自動的に運転室や関係スタッフへアラートを通知し、被害を最小限に抑えるための迅速な初動対応を可能にします。
顧客要件
- メーカーが混在することによるシステム間の互換性トラブルを防ぐため、ハードウェアはすべて同一のサプライヤーから一括して調達する必要があります。
- 厳しい動作環境における堅牢性および信頼性を確保する観点から、国際的認証機関が策定した鉄道向け技術規格への準拠が求められています。
- 限られたスペースでも設置しやすく、導入後のメンテナンスもスムーズに行える2Uラックマウント型コンピュータを提供します。
- 複数のカメラ映像を同時に取り込み、AIによる高度な解析・識別、さらには警告通知の発報までを1台でこなす、高性能な専用GPUを搭載しています。
- 将来的にシステムの拡張やアップデート、メンテナンスを行う際にも、同一アーキテクチャのまま柔軟に対応できる、先を見据えた拡張設計を採用しています。
導入製品
ITA-5231G-S7A1は、国際鉄道車両規格の認証を取得しており、列車運行時に発生する振動や衝撃に加え、車内環境における電磁干渉や温度変化にも十分に耐えられる堅牢な設計を採用しています。また、グラフィックス処理およびAI推論を担う中核として、NVIDIA Quadro T1000 GPUモジュールを内蔵しています。内蔵MXM GPUの高い処理性能により、大量の映像データをリアルタイムで解析し、異常を迅速に検知します。検知結果は即座に運転室のモニタへアラートとして表示され、迅速な判断と対応を支援します。
ITA-5231G-S7A1は、冷却ファンを使用しないファンレス設計を採用しており、ファンの故障や経年劣化によるトラブルを気にすることなく、長期にわたり高い耐久性と信頼性を発揮します。また、モジュール構成により、将来的に新しい機能が必要となった場合でも、機器全体を買い替えることなく、最小限のコンポーネント追加で柔軟に拡張できます。例えば、カメラ台数の増加に応じたLANポートの追加や、SSDの増設による映像データ保存容量の拡張(保存期間の延長)にも対応可能です。さらに、運用する車両や用途に合わせて、MVBやCAN Busといった鉄道向け通信インターフェイスを後から追加することもでき、高い拡張性と将来性を備えています。
弊社は日本国内に拠点を構え、FAEエンジニアによる即応性の高い技術サポートを提供しています。システム開発の過程で技術的な課題が発生した場合でも、専任の専門チームが迅速に対応し、システムの微調整やデバッグ(不具合修正)を行うことで、最高のパフォーマンスを発揮できるよう支援します。
- ITA-5231G-S7A1:第6世代インテル® Core™ iプロセッサ搭載の鉄道用途向けファンレスシステム (EN50155準拠)
- SKY-MXM-T1000:AI推論用に特化した組込みNVIDIA RTX™ T1000専用GPUカード
- EKI-9512G-4GMW:マネージドイーサネットスイッチ 12ポートGbE (EN50155準拠)
システム構成図
まとめ
日本の鉄道事業者と共同で開発した弊社の能動型監視・予測AIトータルソリューションは、極めて高い認識精度を実現し、実運用環境においても安定した性能を発揮しています。鉄道向けに設計されたファンレス産業用PC、高速処理に対応したGPU、ネットワークスイッチを組み合わせることで、車内映像を常時かつ途切れなく監視・解析します。危険の兆候をリアルタイムに検知することで、乗務員は即座に状況へ対応でき、乗客の安全確保につながります。さらに、本ソリューションの導入により、事故発生リスクの大幅な低減を実現するとともに、各駅における保安・警戒目的の人員配置を最適化し、運行コストの削減にも貢献しています。
弊社はグローバル市場において、鉄道事業者のデジタル変革(DX)を幅広く支援し、安全性と効率性を兼ね備えた次世代インフラの構築に取り組んでいます。産業IoTやAI技術を活用することで、新たな価値を創出し、お客様とともにビジネスの成長を実現するパートナーであることを目指しています。デジタル変革(DX)の推進により、乗客の安全性向上と安心して利用できる移動環境を実現するとともに、利便性の向上や業務の省人化を図り、鉄道事業者の持続的な競争力強化に貢献します。