マイクロ振動測定システムによる地震時の半導体製造施設の安全確保
2024/04/23
.jpg)
背景
半導体製造プロセスは、極めて高い精密性が求められるため、振動の影響を受けやすいという特徴があります。この振動は、工場内での人の移動やファン、ポンプなどの内部要因だけでなく、周囲の交通や建設工事、地震などの外部要因からも発生します。わずかな振動であっても製造プロセスに重大な影響を与え、生産歩留まりの低下を引き起こす可能性があります。そのため、振動対策は半導体製造の効率性と品質を確保する上で、欠かせない課題となっています。
台湾は地震が多発する地域であるため、微小振動測定システムは現地の半導体メーカーにとって不可欠なツールとなっています。このシステムは、設備を保護し、運用リスクを低減させるとともに、従業員の安全を確保する役割を果たします。地震波には速いP波(初期微動)と遅いS波(主要動)が含まれており、これを活用することで地震の規模を予測することが可能です。P波を検知すると、システムは続くS波の影響を予測し、より破壊力のあるS波が到達する5秒から30秒前に設備に対策を促します。このような先制的なアプローチにより、地震による被害や怪我を最小限に抑えることが期待されています。
プロジェクト概要
台湾の著名な半導体企業が新しい製造工場を建設するにあたり、微小振動測定システムの導入を検討しています。このシステムの主な目的は、既存のウェハ製造設備を環境由来の微小振動から保護し、歩留まりの低下を防ぐことに加えて、将来的な構造強化を支援し、設備の保護を図ることです。また、地震発生時には早期警報を提供し、重要な設備を地震前に迅速に停止させる判断をサポートすることで、災害後の早期復旧を可能にします。このシステムは、人員の安全、生産ライン、さらには製品品質を守る上で、非常に重要な役割を果たします。
さらに、新しい工場では、従来のシステムで直面していた納期遅延、品質問題、アフターサービスの不十分さといった課題を解決するため、アドバンテックの振動検知製品への移行が進められています。この新しいシステムは、より効率的で信頼性が高く、工場の運用効率と信頼性を一層強化することが期待されています。
また、今回のプロジェクトでは、アドバンテックが振動測定およびテストシステムの統合に豊富な実績を持つProwave社と提携しています。Prowave社は、特に半導体業界における振動関連の課題に対する深い専門知識を有しており、その経験を活かして本プロジェクトをサポートします。
システム要件
マイクロ振動とは、周波数が2Hzから100Hz、振幅が50μm/s未満の振動を指し、通常の振動測定ツールでは検出が難しいものです。そのため、お客様は、このような微細な振動を検出できる高精度なマイクロ振動測定システムを求めています。これらの振動は意思決定において非常に重要であり、正確なデータに基づいた迅速かつ効果的な対応が必要です。この高度なシステムによって、微細な振動を早期に発見し、対応することができ、運用の安全性や効率性が大きく向上します。
ビルの各階には、振動を検出するために統合型電子圧電(IEPE)センサーが設置され、床や周囲の環境の微細な振動がリアルタイムでモニタリングされます。振動のさまざまな変動を正確に測定するためには、広範囲で高精度な信号測定が可能なデータ収集(DAQ)カードが必要です。このカードは、正確なデータの読み取りを保証し、誤報を防ぐために重要な役割を果たします。さらに、ビル全体にわたる広範な配置を考慮すると、これらのDAQカード間での同期が必須となり、現場の複数のソースから同時にデータ収集を行うためにスムーズな運用が求められます。
導入製品
システムの概要
このシステムは24時間体制で稼働し、各階でのマイクロ振動レベルを常時監視します。これにより、背景振動や機械運転による長期的なパターンやトレンドを把握することができます。振動がVC(振動基準)曲線のレベルや指定されたGal値を超えた場合、システムは即座にアラートを発信します。また、詳細なレポートは5分以内に作成され、迅速な対応をサポートします。この高度な監視機能により、異常が発生する前に早期警告を受けることができ、施設の安全性と運用効率を最大限に保つことが可能です。
このシステムは、最新のPCB IEPEセンサーを使用してマイクロ振動信号を測定します。高いサンプリングレートを誇りながら、非常に低いノイズ比(50 μVrms)を維持し、正確なデータ取得を実現します。さらに、システムはVCカーブレポートを自動で生成する機能を備えており、特定の地点での振動状態について現場で即座に洞察を得ることができます。この先進的な機能により、振動状態の迅速な評価が可能となり、迅速な対応と予防的なメンテナンスを提供します。
本プロジェクトで選ばれたPCIE-1803 DAQカードは、8チャンネル、24ビット、128 kS/sの精度信号取得を実現するPCI Expressカードです。このカードは、システムの機能に不可欠な3つの主要な特長を備えています。
- IEPEセンサ対応:PCIE-1803は最大102dBの広範囲な精度測定を提供しており、IEPEセンサーからのデータを完全に取得できます。この広い測定範囲により、非常に微細な振動から目立つ大きな振動まで、幅広い振動を検出することが可能です。
- 同時チャンネルサンプリングとマルチカード同期対応:PCIE-1803は、同時チャンネルサンプリングに対応するだけでなく、マルチカード同期にも対応しており、システム内のすべてのチャンネルを同時にサンプリングできます。この機能は広範囲な監視において非常に重要で、最大64のセンサーノードからの同時データ処理を可能にします。
- 低消費電力:PCIE-1803は、最大負荷時の消費電力がわずか4.8Wであり、過熱のリスクを効果的に抑制します。この低消費電力設計は、システムの信頼性と長寿命を向上させる重要な要素となっています。
アドバンテックは、顧客の特定のニーズに合わせた多様なプラットフォームオプションを提供しています。本プロジェクトでは、ACP-4000ラックマウントシャーシと、AIMB-788 Intel® Core™ プロセッサを搭載したメインボードが使用されました。ACP-4000シリーズは、LEDインジケータとアラーム通知機能を備えており、迅速な故障検出と対応を可能にします。また、低騒音でPWM制御のファンを搭載しており、振動を最小限に抑え、データの整合性を守ります。AIMB-788は、12世代Intel® Core™ i5-12500プロセッサを搭載しており、高性能なマルチタスク処理と、5つのPCIe拡張スロットによる柔軟性を提供します。さらに、Microsoft Windows 10による安全なシステム管理にも対応しています。
お客様は、ソフトウェア開発にLabVIEWを活用しており、アドバンテックのDAQNavi SDKとPCIE-1803をLabVIEWのVI開発環境に統合しています。DAQNavi SDKは、設定とデモンストレーションを簡素化し、初期の開発と検証を迅速化します。
システム構成図

効果・メリット
アドバンテックのPCIE-1803 DAQカードは、高精度な信号取得能力とマルチカード同期機能を提供し、微小振動データの効果的な取得に欠かせない要素となっています。DAQNaviの導入により、開発時間が大幅に短縮され、プロジェクトの進展が加速しました。
PCIE-1803は、半導体産業にとどまらず、石油化学や鉄鋼などの重工業における高度な計測ニーズにも対応可能な万能デバイスです。このカードは、パイプラインや鋼鋳造設備など、大規模な設備の健全性監視に最適で、広範囲の産業で信頼性の高い測定結果を提供します。
アドバンテックの音響および振動計測(IEPE規格)ソリューション

アドバンテック産業計測および分析ソリューション
