最新技術の画像認識を用いて健康なミツバチの群れを追跡
2020/08/11

Location: United State
課題
近年、養蜂家の報告によると、冬ごとに平均して全てのミツバチの群れの30%が失われています。日本中でもミツバチが減少している一番の原因は、ミツバチの体に寄生するダニによる被害です。これは経済的に許容できる損失の2倍です。同様に、野生のミツバチの集団も減少していると報告されています。
環境アメリカ研究政策センターによると、世界の食料の大部分を供給する100種類の作物のうち71種は、ミツバチによる受粉に依存していると報告されています。ミツバチの巣の失敗の原因は、女王蜂の問題が25%から40%を占めています。その他の原因には、環境リスク、栄養不良、寄生虫、病気が挙げられます。
ミツバチの巣の健康、ミツバチの行動、女王蜂の問題についてさらに学び、将来のミツバチの巣の損失を抑制するためには、どうすればよいでしょうか?革新的なソフトウェアとサービスを通じて分析のリーダーであるSASは、そのような疑問に対応しました。
SASは世界の重要な問題解決にデータ分析を活用し、ミツバチの巣の健康状態についてさらに理解する必要がありました。ミツバチの巣を分析することで、ミツバチの減少を遅らせるための具体的な目標に取り組んでいます。
巣の健康状態をモニタリングし追跡するための目標は、以下の通りです。
- ミツバチの巣の健康状態を理解
- ミツバチと巣のさまざまな側面を測量化
- 餌の供給状況についての理解を認識
- 植物の開花時期を把握
- ミツバチの行動を観察
- 巣内で起こる出来事を検知
これらの目標を達成するために、SASは機械学習、人工知能(AI)、視覚解析などのIoT技術を効果的に活用しました。全体的に健康状態を把握するために、以下のような様々なIoTデータを収集し、可視化・分析する必要がありました:
- 従来のセンサデータ:巣の中の重量、温度、湿度
- 巣の中からの音声ストリーム:音響解析
- 巣の外からのビデオストリーム:映像解析
導入結果とメリット
ノースカロライナ州ケーリーにあるSASキャンパスのミツバチの巣から必要なデータを収集するために、センサとAI推論システムが使用されました。巣のデータをクラウドに直接ストリーミングして、巣の内部や周囲の重量、温度、湿度、飛行活動、音響などのデータポイントを測定しました。また、機械学習モデルを活用して巣の音を「聴く」ことにより、健康状態、ストレスレベル、群れの動き、女王蜂の状態などを把握することができました。
SASは、ミツバチの巣の外からのビデオストリームによる機械ビジョンデータを処理するために、アドバンテックのMIC-720AI AI推論システムを活用しました。以下の図は、NVIDIA® Jetson™プラットフォームを搭載したMIC Jetsonシリーズの一部です。



MIC-720AIを使用することで、組み込みモジュールでGPUワークステーションと同等の性能を得ることができます。このデバイスは産業用の振動や高温に耐えられ、モジュール式でコンパクトなデザインをしています。このミツバチの巣のモニタリングプロジェクトでは、MIC-720AIを野外の耐候性エンクロージャーに設置し、高温や湿度に耐える必要がありました。
収集されたデータが詳細で綿密であるため(映像ストリーム上の個々のミツバチ、巣箱の音など)、SASチームはRPCAという機械学習技術を利用しました。RPCA(Robust Principal Component Analysis)は、従来の主成分分析(PCA)を拡張した手法で、データの中に含まれるノイズや外れ値に対してより頑健(ロバスト)な分析を行うための技術です。例えば、RPCAは、風で動く背景の草から前景のミツバチの画像を分離するのに役立つでしょう。
MIC-720AIのような産業用Edgeハードウェアは、ミツバチの巣で分析結果をストリーミングすることができました。これは、SASが最も関心を持っていたのが生のビデオ映像ではなくその結果であったため、画像処理にとって非常に重要でした。結果をセルラー回線で送信することで、回線を効率的に利用することができます。

アドバンテックが選ばれる理由
- GPU対応の互換性 — GPUカードとの互換性を確認済
- 産業用信頼性 — 振動防止、防塵、高温運用向けの産業設計
- 簡易な展開 — コンパクトなサイズと手軽なメンテナンス
関連製品

【終息】MIC-720AI → 【後継】MIC-710AIT
NVIDIA® Jetson™ Tegra X2プロセッサをベースとしたAI推論システム
MIC-720AIはARMベースのシステムであり、NVIDIA® Jetson™ Tegra X2 System-on-Moduleプロセッサと統合されています。このシステムは、NVIDIA® Pascal™アーキテクチャの256 CUDA®コアを搭載し、低消費電力で豊富なI/Oをサポートするエッジアプリケーション向けに設計されています。
このシステムには、4GBのLPDDR4メモリ、4Kビデオのデコードとエンコード機能、2つのUSB3.0ポート、PoE、mSATA拡張機能が搭載されています。壁取り付けブラケットとファンレス設計により、厳しい環境でも簡単に設置できます。この小型の組み込みシステムは、AI推論エッジやディープラーニングのアプリケーションに最適です。